有能な指揮者にかかれば、耳タコの曲でも新鮮に響く・・・大フィル定期
いい方向に裏切られた、という感じです。
大阪 ザ・シンフォニーホール
大フィル第438回定期演奏会
イオン・マリン指揮大阪フィルハーモニー交響楽団
ムソルグスキー:交響詩「禿山の一夜」(原典版)
ラヴェル:組曲「クープランの墓」
ムソルグスキー=ラヴェル:組曲「展覧会の絵」
ここまで何も書いてこなかったが、今期の大フィルの定期のラインアップについては、ぐすたふくんも正直「なんやこれ!!」という気持ちがなかったわけではない。その最たるものが今回の定期のプロ。なんですか、これ?これが定期のプロですか?はっきり言って、幻滅した、といってもいい。まあ、こういうこと、ファンを自認するのであれば、言わぬが花、胸の内にぐっと仕舞って・・・と思っていました。
だから、本来金曜日の定期会員のぐすたふくん、金曜日に会議が入った時、こりゃパスやな、と思いましたね。無理していくこともなかろうと。でも、今日の仕事の進み具合からすると、今日ならいけるなと思った時、ひとつでも座席を埋めるのも会員の努め、大フィルのためならえんやこら、と、チケットセンターに電話して日にち変更を依頼。これを受けてくれるのが、今の大フィルのえらいところです。
ほとんど義務感でシンフォニーに座る不遜な極道ぐすたふ君の前に颯爽と現れたイケ面指揮者、このひとが最初の「禿山」をさっと振り始めて数小節、ぐすたふくん、顔色が変わりましたね。こいつ・・・・只者ではない、と。
この「禿山」と「クープラン」の二つ、こんな耳タコの曲からこんな音が出てくるとは。確かに、曲のプロポーションや進み具合は僕の知っている各々の「それ」なのだが、まるで違う曲のような響き。「禿山」のごつごつ感(特に原典版に差し替えられた終結部における、油絵具をチューブから直接塗りつけたような肌触り)と「クープラン」のペパーミントやハッカのそれを思わせるテクスチュア。特に、後者の響きの風合いは今まで僕が耳にしたことのないもの。同じオーケストレーションから、これほどの違いがある響きがでてくることの不思議。有能な指揮者、とはこういう芸当ができるものなのか、と思いました。
もっとも美しかったのは、3曲目「メヌエット」の終結部。黄金の夕映えを思わせるその音像には、「恍惚とする」という言葉が最もふさわしかったです。
これだと、「展覧会の絵」もどうなるか、と思ったのだが、流石にこの曲に関してはあまりいじれないようで、耳慣れた響きをそれほど逸脱するものではなかったです。ただそれでも、あちらこちらに仕掛けはあって、ビドロのソロがユーフォニウムではなくチューバで吹かれるとか、打楽器の編成や扱いに少々手を加えてたり(多分やってたと思ったが、僕の間違いかなあ?)など、面白い音がするものだから、少々お疲れで眠気がきてもおかしくないぐすたふくんでも全然眠くならなかったですね。
圧巻は、キエフでのずれずれバスドラをちゃんとやってるところ。これ、実は僕の知ってる中では唯一チェリビダッケがやってるんです。どういうことかというと・・・・終結部のバスドラ、ラヴェルの書いた通りにやると、まるで間違えて遅れて入ったように聞こえるんで、普通はきちんと拍に合うように直すらしい(実際、この間の秋山さんは、直してました)。ところが、これをその通りにやった方が面白い効果が生じるんですよね。つまり、祝典や式典の背景に、その進行とは無関係に花火が打ちあがるような効果、なんだけど、それが、今日は強烈に決まった。これまで、生で何回も展覧会の絵を聴いてきたが、これだけはっきりわかったのは、今日が初めて。ここらへんも、この指揮者の個性、ですな。
改めてこのイオン・マリンという指揮者の経歴をしげしげと見直してみると、ズラリと並ぶヨーロッパの超一流オケの名前。ううむ、ぐすたふくんが浅学にしてしらないだけで、実はすごい人だったのね。
耳タコの曲から鮮烈かつ新鮮な響きを引き出す・・・・これは、前に大植さんの代役に立ったペーター・フロールの時にも感じたこと。でも、存外これがヨーロッパの今の響きなのかもしれない、僕たち日本の聴衆が知らないだけで。
もしかしたら、今期のラインアップ、曲目は陳腐であっても、実は・・・・ということなのか?指揮者のラインアップに、秘密があるということなのか?
うううううむ、音楽監督大植英次、その策士ぶりをここに発揮している、ということなのだろうか?真相は、これから明らかになりますな。
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むむむ!
ぐすたふさん
ご無沙汰しております。
正直自分もぐすたふさんと同じく
このプログラム?って感じをしておりチケットを買うのをためらっていました。
今日の公演いってきますが、なかなか期待できるみたいですね。楽しみです。今からウキウキしてきました。
ただ心配なのは・・・
大フィルの金管陣は大丈夫でしたでしょうか?
展覧会の絵でコケられてしまったらどうしようと・・・
それだけが心配で(笑)
けんちゃろ | URL | 2010-05-21(Fri)08:45 [編集]
むむむむ!
こんばんは。中々聴き応えのある定期でしたね。歯切れのいいイオン・マリンの采配ぶり、実に見事でした。
>なんですか、これ?これが定期のプロですか?はっきり言って、幻滅した、といってもいい。まあ、こういうこと、ファンを自認するのであれば、言わぬが花、胸の内にぐっと仕舞って・・・と思っていました。
いやいやぐすたふさん、競争や批判のないところに、良いプロダクツおよびコンテンツは生まれません。駄目なものはダメと声を上げ、さらなる充実を求めるのもファンの使命であろうと僕は考えます。「これは名曲コンサートか!?」と問いたくなる今年の定期のプロは、お粗末としか言いようがありません。
しかし今回は珍しくトランペットに大きなミスがなく、金管群も好演でしたね。やる気になればできるじゃん!
雅哉 | URL | 2010-05-21(Fri)19:25 [編集]
Re: むむむ!
けんちゃろさん、こんばんは。
>
> 正直自分もぐすたふさんと同じく
> このプログラム?って感じをしておりチケットを買うのをためらっていました。
そうでしょう、そうでしょう。でも、客の入りは逆に良かったのだから、複雑であります。もうちょっと大阪のみなさん、定期会員になってどんな曲でも聴きに来るひいき筋としての度量をみせていただきたいもんだ。せっかく、タニマチ、の語源となった街だというのにねえ。
> ただ心配なのは・・・
> 大フィルの金管陣は大丈夫でしたでしょうか?
> 展覧会の絵でコケられてしまったらどうしようと・・・
> それだけが心配で(笑)
大丈夫です!!少なくともペットはこけません!!
ホルンもがんばってます!!
そしてなにより、
あの難しいどソロを吹ききったチューバに拍手を!!
ぐすたふ369 | URL | 2010-05-21(Fri)21:45 [編集]
Re: むむむむ!
雅哉さんこんばんは。コメントありがとうございました。
> 歯切れのいいイオン・マリンの采配ぶり、実に見事でした。
いやいや、なかなか見ていて気持ちのいい、クリアな棒で楽しませてもらいました。広上さんに似たところがありますね。
> しかし今回は珍しくトランペットに大きなミスがなく、金管群も好演でしたね。やる気になればできるじゃん!
金管がようやく底上げ成った、という感じがしますね、このごろの演奏。あとは、木管の充実。随分と定年で抜けて空席の目立つ木管、なんとか早くいい人を補充してほしいものです。その点、今回のクラリネットにセンチュリーの持丸くんが来ていたのには、思わずむむむむむ・・・・でもまあ、そんなことより、問題はアングレ1本。早く定席、決めてほしいものであります。
ぐすたふ369 | URL | 2010-05-21(Fri)21:50 [編集]
そうか!
>その点、今回のクラリネットにセンチュリーの持丸くんが来ていたのには、思わずむむむむむ・・・・
もしかしたら、大フィルの空席補充がなかなか決まらないのも、センチュリーのXデーを待っているのかも知れませんね!
雅哉 | URL | 2010-05-22(Sat)01:22 [編集]
いってまいりました
いってまいりましたよ!!!!!
ぐすたふさんの言うとおり。なかなかなかなかの演奏会でした。
大フィルの金管木管の健闘はすごかったですよね!!!!
個人的にはトランペットの篠原さんは素晴らしかったと思いました。彼が大フィルに入団したことはほんと喜ばしいことって思いました。
けんちゃろ | URL | 2010-05-22(Sat)16:19 [編集]
Re: そうか!
> もしかしたら、大フィルの空席補充がなかなか決まらないのも、センチュリーのXデーを待っているのかも知れませんね!
ううううううむうううううう・・・・どーなんでしょうか?
ぐすたふ369 | URL | 2010-05-22(Sat)21:54 [編集]
Re: いってまいりました
けんちゃろさん、こんばんは。
> 個人的にはトランペットの篠原さんは素晴らしかったと思いました。彼が大フィルに入団したことはほんと喜ばしいことって思いました。
同感ですね。でも、優秀なだけに、他にいってしまわないかと心配で心配で。だって、京響の菊本君も、東京の方に行くかもしれないといううわさがあるんですよね。
大阪に優秀な奏者をつなぎとめておくためにも、大阪のみなさん、支援をお願いいたしまする
ぐすたふ369 | URL | 2010-05-22(Sat)23:02 [編集]
ぐすたふさん、はじめまして。
Harmoniaと申します。
(もしかしたら、以前に少しコメントさせて頂いた事があるかも知れません)
かなり前からこちらのブログ、拝見してさせてもらってましたよ。
ところでぐすたふさん、今回の定期は、やはり2日目はお聴きになられていないのでしょうか?
もし両日とも聴かれたのでしたら、その差異をUPして頂けたらと思いまして。
私は2日目の定期会員でして、何事も無く無事に2日目を聴くことが出来ました。
多分いつもの様に2日目は、1日目より遥かに素晴らしい演奏になっていたと思われます。
Harmonia | URL | 2010-05-24(Mon)22:25 [編集]
Re: タイトルなし
Harmoniaさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
> (もしかしたら、以前に少しコメントさせて頂いた事があるかも知れません)
Harmoniaさんとしてのコメントをいただいたことは無かった、と思います。とおりすがりさん、という名前を使われたことはございましたでしょうか?
> かなり前からこちらのブログ、拝見してさせてもらってましたよ。
ありがとうございます。これからも、よろしくお願いします。
> ところでぐすたふさん、今回の定期は、やはり2日目はお聴きになられていないのでしょうか?
> もし両日とも聴かれたのでしたら、その差異をUPして頂けたらと思いまして。
基本的には、二日とも聴こうという努力をするのは、大植監督の回だけです。他までやってたらお金が・・・(^^;;)、実際、時間的に無理なんですよ。大植さんの演奏を逃すまい、という一念で二回行ってますが、これとて、かなり「しんどい」んです(笑)。
> 多分いつもの様に2日目は、1日目より遥かに素晴らしい演奏になっていたと思われます。
そうですか。でも、今回、随分1日目も「こなれた」感じに仕上がってましたから、その差異は小さかったのではないかな、と思いますが・・・・
もしよろしければ、具体的にどの辺が良かったとか、読ませていただければ・・・・ブログなど、お持ちではないのでしょうか?
ぐすたふ369 | URL | 2010-05-25(Tue)00:16 [編集]
こんばんは、ご無沙汰しています。
この日は仙台でした・・・う~~ん残念。夫の知人が行ってくれたのですが、ぐすたふさんと似た感想をもらいました。
横レスですが
私はharmoniaさんとはフェリーチェさんのblogでお会いした気がします。
jupiter | URL | 2010-05-27(Thu)23:55 [編集]
Re: タイトルなし
Jupiterさん、こんばんは。コメントありがとうございました。
> この日は仙台でした・・・
いいなあ、仙台。7大都市では、最も行く機会のない都市です。新緑が綺麗だったでしょうね。
> うーん、残念
そうでしょう(笑)。イオン・マリン、次回のベルリンフィルのワルトビューネコンサート(野外コンサート)の指揮者をやることも決まっているらしいです。多分、NHKがBSで流すんじゃないかと思います。
> 横レスですが
> 私はharmoniaさんとはフェリーチェさんのblogでお会いした気がします。
そうですか、そこで私もお会いしているのかもしれません。
しばらくフェリーチェさんのところにも、行ってません。いい機会ですし、また見に行ってみます。
ぐすたふ369 | URL | 2010-05-28(Fri)07:13 [編集]
いってまいりました
ぐすたふさん
いずみホール特別公演いってまいりました。
観客6割強という残念な入りでしたが、
演奏はホームラン級です。
大阪クラシックで培ってきた?合奏がまさに花開いた気がしました。すごかったです。
延原さんの大阪のおっちゃんらしさも楽しめました。
定期といい、今回のいずみシリーズといい。
大阪フィルでなにかが起きる予感です。
名曲が名曲で終わらない。そんなシーズンになるのではないでしょうか。
けんちゃろ | URL | 2010-05-28(Fri)11:39 [編集]
Re: いってまいりました
けんちゃろうさん、わざわざレポートいただきありがとうございます。 感謝です。
>
> 観客6割強という残念な入りでしたが、
> 演奏はホームラン級です。
そうでしたかあ・・・・行くべきだったかなあ。
いずみホールシリーズは、これまで大植さんが振った回以外で一杯になったことはなかったと思いますし、6割強でも頑張った方だと思います。
> 名曲が名曲で終わらない。そんなシーズンになるのではないでしょうか。
いい言葉ですねえ!!そこが、今シーズンの「策士大植」の狙いかも。
態勢を整えて、来期から攻めにでる、と思いたいです。
ぐすたふ369 | URL | 2010-05-28(Fri)21:35 [編集]
いずみホール
僕も行ってきました。僕の印象では8割くらいの入りだと想ったのですが……
ぐすたふさん、延原さんの指揮で大フィルは一皮むけた演奏を聴かせてくれました。バージョン2.0と評価したいくらいに。是非第2回目はお越し下さい!
それから余談ですが、児玉宏/大阪交響楽団も一度聴いてみて下さいね。次回は金曜日ですから!
雅哉 | URL | 2010-05-29(Sat)00:45 [編集]
Re: いずみホール
雅哉さん、おはようございます。コメントありがとうございました。
> ぐすたふさん、延原さんの指揮で大フィルは一皮むけた演奏を聴かせてくれました。バージョン2.0と評価したいくらいに。是非第2回目はお越し下さい!
やっぱり、行かなかったのは間違いだったのかなあああああ。そんなに良かったんだ。
> それから余談ですが、児玉宏/大阪交響楽団も一度聴いてみて下さいね。次回は金曜日ですから!
タネイエフでしたね。チェック済みです。いけたらいいなあ・・・
ぐすたふ369 | URL | 2010-05-29(Sat)09:44 [編集]
私も参りました!延原さん、しゃべるとベタベタの大阪弁
でも演奏は洗練されていて、音楽の神髄に触れているような満足感がありました。
長原君はちょっと最初緊張されてたようですが、美しい音色で感動的でした、小栗まち絵さんも来られてました。
でも本当に残念な事が!!あるお客さんが、大いびきで爆睡していたのです(D-11)です。
コンサート中にすやすや眠る人はよく見ますが、演奏者からも見える位置で、体を反らせてゴーゴー、ブーブー・・・信じられない!
この人、連れがいなかったので、周りの人は皆気付いているのですが、大柄な初老の男性で恐ろしい感じで~注意する人がいるはずもなく。。
コンサートの席の当たり外れって本当に困ります。
jupiter | URL | 2010-05-31(Mon)23:35 [編集]
Re: タイトルなし
Jupiterさん、こんばんは。
> でも演奏は洗練されていて、音楽の神髄に触れているような満足感がありました。
ううううう・・・Jupiterさんまで。ああああ、やっぱり行けばよかった。損したなあああ・・・
> でも本当に残念な事が!!あるお客さんが、大いびきで爆睡していたのです(D-11)です。
> コンサート中にすやすや眠る人はよく見ますが、演奏者からも見える位置で、体を反らせてゴーゴー、ブーブー・・・信じられない!
それはひどいなああ・・このプログラムに来るくらいの人、ホントはそれなりの見識のある人なんでしょうけどねえ。
周りの人が、勇気を出すのも、聴衆のつとめ、ではないでしょうか?
ぐすたふ369 | URL | 2010-06-01(Tue)07:12 [編集]